スループットとは?帯域幅との違いを解説
高速通信を謳うインターネットプランを契約したにもかかわらず、「動画再生中に頻繁なバッファリングが発生する」、「ダウンロードに時間が掛かる」、「ゲームでラグが起こる」といった場合、原因はたいていスループットにあります。スループットとは、通信の最大速度等ではなく、一定の時間内に実際に転送されたデータ量(実効速度)のことです。
スループットは帯域幅と並んで、インターネット速度を決定づける最大の要因の一つです。この記事では、スループットが実際に何を意味するのか、速度が変動する理由、「良好な」インターネット速度の指標、スループットを向上させてインターネットをより快適に利用する方法について解説します。
目次
スループットとは?スループットと帯域幅の簡単な比較
スループットと帯域幅の主な違い
スループットが帯域幅より低くなる理由は?
スループットの測定方法
スループットと帯域幅の環境を同時に最適化する方法
よくある質問
スループットとは?
スループットとは、一定の期間内にネットワーク内で実際に転送されたデータ量のことです。
スループットは、インターネットの速度テストを実行した際に表示されるMbpsの数値であり、インターネット速度(「帯域幅」と混同されることもあります)の指標となるものです。
スループットは、リアルタイムでどのくらいのデータが転送されているかを示します。例えば、契約しているインターネットプランの帯域幅が100 Mbpsであっても、端末の速度テストを実行したところ60 Mbpsしかない場合、スループットは60 Mbpsとなります。
ネットワークのスループットが高いほど、デバイスとの間でデータがより高速に転送されるため、ページの読み込みが速くなり、スムーズに動画再生できたり、ラグなくゲームを楽しめます。
スループットと帯域幅の簡単な比較
| 帯域幅 | スループット |
| 最大速度 | 実際の速度 |
| 理論値 | 実測値 |
| ISPによって設定される | 輻輳、遅延、ハードウェアの影響を受ける |
| 通常は高い | 通常は低め |
スループットと帯域幅の主な違い
スループットは一定の期間内に実際に転送されたデータ量を示すのに対し、帯域幅はインターネットで転送できるデータの最大量のことです。
帯域幅は高速道路のようなもので、高速道路の車線数が多いほど渋滞を起こすことなく、より多くの車(データ)が同時にその車線を走行できます。つまり、帯域幅が広いほど速度が低下しづらく、より多くのデータ(ストリーミング、ゲーム、一般的なウェブ閲覧など)を処理できることになります。
帯域幅とスループットの違いを理解することで、インターネットが「想定より遅い」理由がわかるようになります。
たとえ帯域幅が高いインターネットプランを契約していても、ネットワークが混雑している、古いハードウェアを使っている、Wi-Fiの電波が弱いなど、データの流れを遅らせる要因があれば、スループットは低下します。インターネットの実際の速度やパフォーマンスを判断したい場合、スループットの測定が重要な指標の1つとなります。
帯域幅が「上限」だとすると、スループットはその上限に実際にどれだけ近づけているかを判断できる指標でもあります。
スループットが帯域幅より低くなる理由は?
帯域幅は通信の理論上の最大容量ですが、実際のスループットの量は、いくつかの要因によって常に変動します。例えば、契約内容や回線を共有しているユーザー数、また、ネットワーク内部や経路上の様々な瞬間的な動的要因によっても変動します。
帯域幅が変動する要因とは?

各種インターネットプランによってISP(インターネットサービスプロバイダー)が提供するメガビット単位の帯域幅は異なり、契約内容やデータ使用量に応じて通信速度に上限を設けているものもあります。
インターネットに接続しているユーザー数(同一世帯内の人数だけでなく、ISPのインターネット利用者数)も帯域幅に影響を与える要因の一つです。夕方や週末などの利用ピーク時には膨大なユーザー数の大量の通信量に対応する必要があるため、帯域幅が多いプランを利用している場合でも、通信速度が低下することがあります。
また、インターネットの接続方式でも帯域幅は左右されます。例えば、光ファイバーは、ブロードバンドや衛星通信などの旧来の技術(通信速度の低下やデータ制限が発生しやすい)よりも帯域幅が充実します。
スループットが変動する要因とは?

帯域幅の制約の範囲内で実際に利用できる帯域幅(実効スループット)は、いくつかの要因で変動しますが、その中でも最も大きな要因の一つは、ネットワークトラフィック(混雑状況)です。多くのユーザーやデバイスがダウンロード、ストリーミング、またはゲームをプレイしているピークタイムはネットワークの回線が混雑するので速度が遅くなりがちです。なお、このような負荷下では、Wi-Fiよりも有線接続の方が通信が安定します。
また、Wi-Fiの電波強度もスループットに大きく影響します。無線電波が弱かったり不安定だったりすると、データを頻繁に再送信する必要が生じるため、転送プロセスに遅れが生じ、速度が低下します。
これは、データ伝送における遅延(レイテンシー)や、送信中にデータの一部が失われるパケットロスについても同様です。いずれも、情報を再送信しなければならないためスループットを低下させ、動作がもたつくようになります。
特に、古いルーター、性能不足のモデム、最新の速度規格に対応していないネットワークアダプターなど、古い通信機器では、このような問題が起こると速度低下が著しくなる傾向があります。どれほど高速通信の契約プランに加入していても、処理できるデータ量が限られてくるからです。
なお、プロトコルのオーバーヘッド(つまり、デバイスとインターネット間の通信の制御や管理のために必要となる余分なデータ量)もスループットを減少させる要因です。これは、バックエンドの処理なのでユーザーには見えませんが、オーバーヘッドによって利用できるデータ容量が減少してしまうことがあります。
スループットの測定方法
インターネットサービスプロバイダー(ISP)が謳っている各プランの帯域幅は、実際に利用できる帯域幅(実効スループット)ではなく、理論上の最大値を反映したものです。実効スループットのパフォーマンスを確認したい場合は、速度テストを実施しましょう。
1. デバイスをイーサネット接続でインターネットに接続して、Speedtest.net、Fast.com、TestMy.netなど、信頼できる速度測定サイトにアクセスしましょう(Wi-Fi接続でも良いですが、速度の変動が起こりやすいです)。

2. 速度テストを実行して、ダウンロード速度、アップロード速度、およびPing値を確認します。正確な測定値を得るため、数回繰り返して測定することをお勧めします。

3. テスト結果の数値をご利用のISPが提示している数値と比較してみましょう。プロバイダーが謳っている数値の10%〜20%の範囲内の結果であれば、状態は良好であると言えます。
注:速度テストで測定できるのはスループットであり、帯域幅ではありません。スループットと帯域幅の違いについては、前述の項目で詳しく説明していますのでご参考ください。
スループットの良好な数値とは?
スループットの数値は速度を判定する上で重要な指標となりますが、通信速度が「良好」かどうかは、インターネットの用途によって異なります。以下に、一般的な通信速度の範囲と、各範囲内で良好に行える用途の例をいくつか挙げてみました。
- 最大 25 Mbps:ウェブ閲覧、メール、ソーシャルメディア、および1台のデバイスで標準画質または高画質(HD)の動画視聴。
- 25〜50 Mbps:1台のデバイスでHDまたは4K動画視聴、カジュアルなゲーム、ビデオ通話。
- 50〜100 Mbps:複数のデバイスでの同時ブラウジング、メールやソーシャルメディアの利用、およびHD動画視聴。
- 100 Mbps以上:複数のユーザーやデバイスで同時に4K動画視聴、ゲーム、その他データ通信量を大量に消費する用途。
ただし、転送できるメガビット数は、あくまで一つの要素に過ぎません。インターネットのプランを選ぶ際には、帯域幅だけでなく、データ通信量や利用者人数、コスパ面で最も充実したものを検討しましょう。
スループットと帯域幅の環境を同時に最適化する方法
帯域幅とスループットの測定対象は異なりますが、密接に関係しているため、大半の最適化対策は共通しています。以下に、帯域幅とスループットの両環境を最適化できる共通の対策と、実施することで得られるメリットをいくつか挙げてみました。
| 対策 | 実施内容 | 帯域幅 | スループット |
| 機器の調整 | 旧式のルーターやモデムを交換する。可能な場合は、Wi-Fiの代わりにイーサネットを使用する。ケーブルがギガビット速度に対応していることを確認する。 | 契約プランの速度に対応しているハードウェアに交換されることで、不必要なボトルネックの発生を避けられる。 | プロセスを遅らせるボトルネックを軽減し、ネットワーク全体でデータをより高速かつ確実に転送できるようになる。 |
| 通信の優先順位付け | QoSルールを設定する。重要度の低いバックグラウンドプロセスを制限する。スマートデバイスとワークステーションには別々のネットワークを使用する。 | 優先度の高い用途に帯域幅を確保し、優先度の低いアクティビティによる競合を軽減できる。 | 高速性が求められるデータの流通を円滑に保ち、通話、ストリーミング、ゲームの一貫性を向上できる。 |
| パケット損失やレイテンシを最小限に抑える | 可能な限りケーブルの長さを短くする。Wi-Fiのデッドゾーンや干渉を回避する。HTTP/2やQUICなど最新プロトコルを使用する。 | パケットの損失やレイテンシにより再送信が必要になることで生じる帯域幅の無駄を防げる。 | 通信の効率性が向上し、データが中断されることなく迅速に宛先に到達できる。 |
| パフォーマンスを監視する | 異なる時間帯に速度テストを実施する。これにより、ピークタイムや速度変動のパターンを把握できる。 | 帯域幅を大量に消費するデバイスや、通信利用者が急増する時間帯を特定できる。 | 不整合やパフォーマンスの問題を早期に発見し、要因を絞って改善できる。 |
スループットを向上する方法
ネットワークが通信データをどれだけスムーズに処理でき、タスクの優先順位を付け、遅延やタスクの損失を最小限に抑えられるかによってスループット(速度)のパフォーマンスが左右されます。ここでは、通信データの処理を効率化したり、帯域幅とスループットのギャップを埋めるための技術的な方法をいくつか紹介します。
- ネットワークをセグメント化する:ネットワークを個別のゾーンに分割し、データ集約型の処理を行うデバイスと単純な処理を行うデバイス間の干渉を防ぎます。
- レイテンシを最小限に抑える: イーサネット接続に切り替えるか、デバイスとルーター間の物理的な距離を縮め、ネットワークを経由するホップ数を減らします。
- サービス品質(QoS)設定を調整する:ルーターのQoS機能を使って、通信の種類に優先順位を付けます。
- 通信を制御する:ネットワーク上の通信の種類によって処理方法を制御し、ボトルネックを回避するとともに、需要の急増を平準化します。
- ネットワークハードウェアのアップグレード:旧式のルーター、スイッチ、ケーブルなどは、より多くのデータ量に対応でき、最新の性能基準をサポートする機器に交換します。
- 効率的なプロトコルの使用:より高速または軽量なプロトコル(例:HTTP/2 や QUIC)に切り替えて、不要なデータ転送のオーバーヘッドを削減します。
- 負荷分散(ロードバランシング)する:通信を複数の回線や経路に分散させ、単一の回線や経路への過負荷を防ぎます。
- 帯域幅の使用状況を管理する:帯域幅を大量に消費しているアプリケーション(通信のパフォーマンスに影響を与えている可能性がある)を特定し、制限します。
- 定期的なテストと監視:専用ツールを用いてスループットを測定したり、問題を早期に検出して、パフォーマンスの向上を図ります。
帯域幅を向上する方法
ネットワーク負荷を軽減して速度を向上したり、帯域幅パフォーマンスを向上する方法は複数挙げられます。すぐに効果が期待できる対策もあれば、インターネットの設定を恒久的に変更する必要があるものもあります。前述のスループットを向上する方法では、帯域幅の上限に近づける方法(実効スループットの向上)について挙げていますが、ここでの対策には帯域幅不足を解消できるものもあります。
- インターネットプランのアップグレードまたはプロバイダーを変更する:現在のプランで帯域幅が不十分な場合や、通信速度が常に遅いといった場合は、プランのアップグレードや、新しいサービスプロバイダーへ乗り換えて、帯域幅の上限引き上げを検討するのが最善でしょう。
- Wi-Fiチャンネルを変更する:特に近隣住民と近接している場合、Wi-Fiネットワークが互いに干渉し合うことがあります。電波干渉が原因で速度が低下している場合は、混雑の少ないチャンネル(例:2.4 GHzから5 GHzへ、またはその逆)に切り替えることで解消できる可能性があります。
- ルーターを再起動する:速度低下がメモリの問題や接続エラーが原因の場合、ルーターの電源を一度切ってから入れ直す(再起動する)だけで、問題が解決する可能性があります。
- ハードウェアやソフトウェアを更新する:最新の速度規格に対応していない古いルーターや、ファームウェアが古くなっている場合、利用可能な帯域幅が制限される可能性があります。このような場合は特に、最新の状態に保つことが重要です。
- バックグラウンドのアプリを終了する:アプリやデバイスは、アイドル状態でも帯域幅を消費するものがあります。バックグラウンドで実行されている不要なプログラムやクラウドバックアップを終了させてください。
- 使用していないデバイスの接続を切断する:インターネット回線に接続されているデバイスが多いと速度が遅くなりがちです。このような場合は、現在使っていないデバイスの接続を切断するだけで速度を改善できます。
- ウイルス対策ソフトやマルウェア対策ソフトでスキャンを実行する:隠れたマルウェアやその他の不正なソフトウェアが、知らぬ間に帯域幅を消費している場合もあります。定期的なスキャンを行うことで、デバイスをクリーンな状態に保ち、最適なパフォーマンスを維持できます。
- デバイスのキャッシュを削除する:デバイスに一時ファイルが蓄積されると、アプリやブラウザの動作が遅くなります。キャッシュ、クッキー、その他のファイルをクリアすることで、デバイスがページをよりスムーズに読み込むことができ、動作が改善されます。
- VPNを利用する:一部のインターネットサービスプロバイダーは、データ通信量の多いアクティビティ(ストリーミングなど)で帯域幅に制限を掛けることがあります。VPNを利用すれば通信を暗号化できますので、アクティビティが把握されるのを防いでアクティビティベースの帯域制限を回避することができます。
よくある質問
帯域幅とスループットの違いは何ですか?
帯域幅とは、一定の期間で転送できるデータの最大量のことですが、スループットは、その期間内に実際に転送されるデータ量のことです。スループットは、通信経路の効率性などの問題で、インターネットサービスプロバイダ(ISP)が設定している帯域幅よりも低くなることが一般的です。
スループットは、通信速度にどのように影響しますか?
スループットは、インターネット通信の応答性を直接左右する要素です。スループットが高いほど、より多くのデータが迅速かつ確実に届き、ページの読み込みが速くなったり、動画をスムーズに視聴できます。一方で、スループットが低いと、遅延やバッファリング、ダウンロードの速度が遅くなったりします。
スループットと帯域幅では、速度にとってどちらが重要ですか?
速度に関しては、スループットも帯域幅もどちらも重要ですが、実際の速度を示す指標はスループットの方になります。帯域幅はデバイスでデータが転送される速度の最大値ですが、スループットは実際に転送できた量(速度)を指します。
VPNを使うと、スループットは低下しますか?
はい。VPNを使うと、通信が暗号化されてリモートサーバーを経由して再転送されるため、データ転送プロセスにオーバーヘッドが生じ、スループットが低下する傾向があります。そのため、広大なサーバーネットワークを持つ高速なVPNを利用するのが賢明です。